今のあなたは、肥満の状態なのでしょうか?
見た目の問題はともかくとして、客観的に肥満かどうかを判断するのに用いられるのが、BMIと呼ばれる数値です。まず、あなたが本当に肥満なのか、どの程度の肥満なのかをチェックするために、BMIについて解説します。
また、メタボ診断の基準である腹囲の測定数値についても解説します。
最近の健康診断で最もよく用いられている肥満度の指数は、BMIという値。Body Mass Indexの略で、身長と体重から算出される世界共通の指数です。
BMI=体重kg÷(身長m×身長m)
さっそく、あなたの体重や身長を入力して、BMI値を算出してみましょう。
BMIの数値で見る肥満度
世間一般に、BMIの数値によって肥満であるかどうかを判断する方法が広まっています。以下の数値を参考にしてください。
BMIの標準値は22とされ、あらゆる病気にかかるリスクが最も少ない数値とされています。つまり、BMIが22になるように体重をコントロールすれば、生活習慣病などへの罹患リスクを下げることができるわけです。
BMI値が25を超える肥満の方は、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病にかかりやすく、危険な状況だとされています。
日本肥満学会では、2011年に肥満の新しい診断基準として、「高度肥満」を定義しました。この高度肥満は、BMI値で35~40以上の肥満3度から4度の人を指したものです。
この高度肥満症は、さまざまな病気を誘発する原因となります。具体的にいえば、睡眠呼吸障害・心筋梗塞・運動器疾患・皮膚疾患・心臓や脳への血管障害などが挙げられます。
うつ病や摂食障害などの精神病も誘発するとされており、なんの対策も行わないと健康を害するリスクが高くなります。
肥満症の診断基準として、最近新たに肥満関連腎臓病が含まれるようになりました。
肥満症になると腎機能が低下し、尿タンパクや糖尿などが現れやすくなります。血中コレステロールが増える脂質異常症を発症すると、動脈硬化を進行させてしまい、腎臓に大きな負荷が与えられます。
腎臓は血中の老廃物を尿として排出し、タンパク質などの必要な栄養素を再吸収する働きを持っています。しかし、肥満症になるとその機能が阻害され、尿にタンパク質が含まれるようになるのです。
また、肥満症によって糖尿病を発症することでも、腎臓に大きな負荷をかけることになります。
腎臓の中には糸球体と呼ばれる、血中の老廃物を濾過する役目を持つ器官があります。糖尿病により高血糖状態が続けば、この糸球体の血管に動脈硬化が発生し、この濾過をする機能が低下することで尿にたくさんの糖が現れてしまいます。
肥満症になるとこのような腎臓への異常があらわれやすくなるため、新たに肥満の合併症として「肥満関連腎臓病」が追加されたのです。
肥満症を正確に診断するには、BMI値だけでは不十分です。最近多くのメディアで話題となっている「サルコペニア肥満」のように、体重だけでは実態がわからない肥満もあるからです。
そこで肥満症の診断として用いられているのが、腹部CTです。CTスキャンによる造影画像で、内臓脂肪の面積を調べることで、見た目や体重ではわからない体内の脂肪量がわかります。
メタボリックシンドロームの指標となっているのは、内臓脂肪面積が100平方cm以上の場合です。厚生労働省の研究では、この100平方cm以上あると心血管病などのリスクが高くなるという結果が出されました。
健康診断などで肥満症を調べる場合、必ずこの腹部CTスキャンも受けるようにしましょう。
肥満症の治療を行う肥満外来では、腎疾患や糖尿病といった合併症が引き起こされていない場合、減量プログラムによって治療されます。
プログラムは主に、食事療法と運動療法の2つが中心です。体に負担をかけずに痩せさせることが利点ですが、反面、高度肥満の場合はこの減量プログラムでも、たったの5%の人しか効果が得られないとされています。
高度肥満の場合、放置すると体に重大な症状が現れる危険性があります。重度の肥満であり、減量プログラムでも改善が見られない場合、最も効果的とされている治療法は外科療法です。
主に挙げられる方法は、脂肪吸引などで脂肪を取り除く施術方法や、胃の一部を切除して食事の摂取量を減らす施術方法なのです。
いつ肥満症による健康被害がもたらされるかわからず、緊急を要する場合は外科療法が最適でしょう。しかし、重度の肥満ではない人や、肥満による体への負担が少ない人であれば、減量プログラムを受けながら地道に脂肪を減らす方法が最適です。
また、こうした肥満の問題は生活習慣の乱れだけではなく、ストレスや過食症などの精神的な問題が潜んでいる可能性もあります。肥満外来を選ぶ場合、精神的なケアも行ってくれるクリニックに依頼するとよいでしょう。
肥満の中でも特に危険なのが、内臓脂肪型肥満。この内臓脂肪型肥満に高血糖や高血圧などを併発している状態を、生活習慣病の予備軍である『メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)』と呼んで注意が促されています。
厚生労働省の基準に沿った健康診断では、メタボリックシンドロームであるかどうかの判定に、腹囲測定が用いられます。
腹囲とは、お腹周りのサイズを、おへその高さで測ったもので、男性であれば85㎝以上、女性の場合は90㎝以上の場合に、メタボリックシンドロームと判定されます。ウエストサイズではないことに注意が必要です。
肥満状態の人が最も気をつけなければならないのが、「肥満症」です。この肥満症とは、単に体に脂肪がついた状態の肥満とは異なります。
「肥満」は体型の崩れの他、BMIや体脂肪率から導きだされる体の様子のことであり、体に害を与える健康疾患とは異なります。この肥満に対して「肥満症」とは、肥満が元となり発症する疾患の総称です。具体的には糖尿病や脂質異常症、痛風、脳梗塞、月経異常、肥満関連腎臓病などが挙げられます。
●体積が過剰に蓄積している状態
肥満症は皮下脂肪に脂肪が蓄積するタイプではなく、内臓に脂肪が溜まるタイプの肥満でリスクが高まります。内臓に脂肪が溜まると、人の体を維持する「生理活性物質」の分泌量が下がり、体のさまざまな機能が衰えてしまうのです。
内臓脂肪は見た目では判断できないため、CTスキャンなどによって調べる必要があります。
CTの造影検査によって内臓脂肪の面積が過剰に増えている場合、肥満症であると診断することができるのです。
●健康被害が合併した場合や予測される場合
内臓脂肪型の肥満症は、さまざまな合併症を引き起こします。主に挙げられるのは糖尿病・脂質異常症・動脈硬化・脳血管障害・心筋梗塞・脂肪肝・胆石・月経異常です。
最も危険なのが、ガンの発生リスクが高くなることです。大腸ガン・子宮ガン・乳ガン・前立腺ガン・胆のうガンが合併して現れやすく、肥満が元で大きな健康被害を及ぼされる恐れがあるのです。
近年ではこうした内臓脂肪による肥満症を、メタボリックシンドロームと呼び、国内でもその危険性について警鐘が鳴らされています。内臓脂肪による肥満症が予測される場合、重大な合併症が引き起こされる前に速やかに改善しましょう。
肥満の原因は遺伝が3割で、生活習慣の悪さが7割といわれています。遺伝は肥満の根本的な原因とはいえませんが、大きな割合を占めていることは確かなのです。
肥満が遺伝する理由は、脂肪を燃焼する遺伝子に何らかの欠陥があるからです。主に挙げられるのがβ3アドレナリン受容体と、脱共役タンパク質1と呼ばれる遺伝子です。
遺伝子異常は、怪我や病気のように治療することができないため、諦めるしかないと多くの人は考えます。しかし、上記のように遺伝が肥満をもたらす割合は3割です。
つまり、たとえこうした遺伝子を保有していても、日頃の運動習慣や生活習慣を改めることで、肥満症を改善することもできるのです。
BMI値に基づいた統計では、理想体重の2倍を超えている人は、死亡率も2倍高くなるとされています。さらに、糖尿病や心臓発作による死亡率に至っては5倍から7倍高くなるので、肥満症が健康にどれだけ悪影響を及ぼしているかがわかるでしょう。
ただし、この統計はあくまでBMI値のみを使った統計であるため、現在ではその信憑性について疑問視されています。
厚生労働省の研究では、BMI値が高い人だけでなく、最も低い人も死亡率が2倍になるという結果が出ています。BMIの計算は身長と体重のみしか測らないため、体型や体重が変わらないにもかかわらず、生活習慣病のリスクが非常に高い「サルコペニア肥満」の人も「正常」と診断してしまいます。
また、体脂肪率が低すぎる筋肉質の人も、体の抵抗力が低くなる他、激しいトレーニングにより心臓や血管に大きな負荷がかかり、寿命が下がってしまいます。
BMI値で最も死亡率が低いとされているのは、23~25のやや小太りとされている値の人です。脂肪を付けすぎる肥満の状態は問題ですが、ある程度の脂肪がなければ逆に寿命を下げる結果となります。
健康的に過ごしたいなら、太りすぎの体型も痩せすぎの体型も避けなければなりません。
BMI値で肥満と診断されても、腹囲測定では肥満と判定されない場合もあります。さらに逆の場合も考えられ、2つの判定が一致しないことも多いようです。
しかし、どちらかが肥満に該当しないからといって、安心はできません。どちらか一方でも肥満の基準値を超えた場合は、太り気味であることをしっかり自覚して、食事や生活の改善を行うべきです。また、何らかの生活習慣病も疑ってみる必要があります。
皮下脂肪や内臓脂肪を減らし、健康で明るい生活を送るための方法として、自分に合ったダイエット法の検討をはじめましょう。